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世界から「空だけ」を抽出した素晴らしいグラデーション・パターン Eric Cahan | DDN JAPAN / (DIGITAL DJ Network)
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月世界旅行
記録技術としての映画を発明したのはリュミエール兄弟(とエジソン)だが、映画をメディア、そして娯楽にまで高めたのは、月世界旅行で有名なメリエスだ。技術にそれをストーリーとして見せる文法が加わることで、はじめて映画は映画になった。
人間は実は脈絡のない世界に、ストーリーを見いだすことで世界と自分を理解する。記憶というのは、自己同一性を保つためのストーリーだ。記録技術が記憶=ストーリーを語るメディアとなるのは必然だった。
映画にはストーリーを自然と見いだせるための工夫がたくさんある。映像文法などと呼ばれているものの目的は結局のところそこにある。モンタージュ技法も、イマジナリーラインも、文脈をコントロールするための技術だ。
僕は今、3次元ビデオというものを研究している。
3次元ビデオは技術としては完成に近づいている。しかしこれはまだ記録技術にとどまったリュミエールの映画の段階だ。メリエスから始まる映像文法にあたるものはまだ誰も見つけていない。(あるいはそんなものは存在しないのかもしれない。)
映画は3次元の現実世界を2次元の映像で切り取ったものだから、すでにその視点の定め方で文脈のコントロールは始まっている。この文脈のコントロールが積み重なってストーリーは立ち上がってくる。
一方、3次元ビデオは現実世界をそのまま3次元で記録したものだから、そのままでは鑑賞者にとっての自由度が高く、文脈はコントロールされていない。
僕は実際の作品やサービスの形での試行錯誤の中から、新しい3次元映像文法を見いだしたいと思っている。例えば、鑑賞者の視点に応じてストーリーが受動的に展開していくというのはどうだろう。より能動的にストーリーを見いださせるしかけを作るならば、3次元ビデオを現実世界の具体的場所に固定するなどして、その自由度を低くする必要があるだろう。リュミエールによって2次元のスクリーンの中に封じ込められた列車が、再び実世界に戻ってくるのだ。
遠い将来、月世界旅行が現実のものとなった頃。月面での人類最初の足跡に、3次元ビデオで再現されたアームストロング船長が降り立つ姿をみることはできないだろうか。そんなことを僕は夢想している。